先日、勤務医時代から拝見しているお子さん(小学1年生)からこんな質問をいただきました。
「ねぇ?歯医者さんて、歯のことでわからないことってあるの?」
とてもリラックスした雰囲気でニコニコしながら聞いてくれたので、
「歯のことで知ってることもたくさんあるけれど、わからないこともたくさんあるよ。だから、歯医者さんになっても歯のことや口のことやいろんなことをずーっと勉強するんだよ。」
「◯◯ちゃんが学校でいろんなことを勉強して知るようになっているのと同じように、大人たちもずっと学び続けているんだよ。」
と答えました。
そのお子さんは、さらにニコニコと笑って、
「そうなんだー!」
と答えて、その日も和やかに診療台にあがり、口の中を見せてくれました。
“そうなんだー!” の言葉の中に、どんな気持ちが込められていたのでしょうか。
わからないことがあると答えたことで、そのとき近くで聞いていらした保護者の方を不安にさせなかっただろうか。
と、その質問にどう答えるべきだったか正解を考えていました。
私たち専門職にはそれぞれ専門分野があり、人ひとりが習得し提供できる技術や知識の範囲はコンピューターと同じようにはいかないという現実があります。
そのような中で悩んだ末、正解の代わりに自分に再認識として課したことは、
目の前の方のために学び続けること。
わからないことをわかるふりをしないこと。
という事でした。
当院で対応することが難しい症例をお待ちの方には、高度専門機関をご紹介させていただくこともありますし、専門医受診をご提案させていただくこともあります。
誠実な歯科医療をおこなう。
という信念でお一人おひとりに向き合っていくことが、このお子さんへの”答え”になればいいなと思っています。