「ほどなく、お別れです」
スカイツリーのふもとの葬儀屋さんを舞台にした小説です。
写真は医院の近くです。
書店で表紙を見たとき、
知っている景色に思わず購入しました。
作中の、
「そうやって悲しみを癒やす手伝いをするのも、僕の役割だと思っているからね」
「亡くなった方というよりも、お身内のための式みたいですね」
「そうだ。たとえ身内でも、亡くなった方にはもう何もしてあげられない。こうやって、後悔の念を少しでも昇華させるしかない。葬儀とはそういう場でもある」
という場面は、とても印象的でした。
本書の解説には、
“葬儀とは、死者のために行われるものであると同時に、生者のためのものである。
生前にもっとしてあげられたことがなかったかという後悔と過去の自分に対する怒りを晴らし、
死者となったその人と別れたことよりも出会えたことに意識を向けることで、
前を向き、明日へと一歩踏み出すきっかけを作るのだ。”
とありました。
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このところ、
さまざまなお別れの場面に接することがありました。
葬儀は亡くなった方だけでなく、
遺された方のためのものでもあること。
故人が日常からいなくなることに心の区切りをつけ、
それでも人生は続いていくことを受け入れるための儀式だと感じます。
人は2度死ぬと聞いたことがあります。
1度目は身体が機能しなくなったとき。
2度目はその人を思い出す人がいなくなったとき。
亡くなって何十年経っても、
遺った人たちで何度も同じ思い出話をして、
その人を思い出して何度も同じように
泣いたり笑ったりしながら
そうそう知ってる、知ってる!
とか
その話、初めて聞いた!
とか言いながら
思い出すことができること。
そんな時間は
お弔いでもあり、
同時に
まだ心の中でその人が生きていることを証明する
役割があるように思います。
人は
生きている時は自分の外側にいて
亡くなると内側に入るんですね。
この小説の舞台が地元の私にとって、
このお話はフィクションであるにも関わらず
どこかにこのお話にでてくる業者さんや働く人たちがいるのではないかと想像させてくれます。